COLUMNコラム

8.重要事項 – 転がり軸受け解説

1:潤滑システムの設計

軸受の内部は、転がり運動する部分ばかりではなく、転動体でさえも軌道の上を転がりながら滑ることもある。ころ(転動体)の端面と端面とつばとの間、保持器のポケット(転動体を装着している空間)と転動体との間、保持器の案内面と軌道輪とは、滑り運動面である。したがって、”転がり”軸受とはいっても、十分な潤滑が必要である。

潤滑の目的

  • 軸受内部の運動部分の焼付きを防ぎ、摩擦を小さくし、摩耗を減らす。
  • 転がり面に油膜を形成させ、表面の摩擦力を減らし、転がり疲れによるはくり(フレーキング)寿命を長くする。
  • 油を使う潤滑法では、軸受に発生する摩擦熱を油によって外部に持ち出したりして、軸受の温度を低くする。
  • グリース潤滑では、外部のごみや異物が軸受の中に侵入するのを、防止する。
  • 軸受の表面を、油膜で覆い、さびの発生を防ぐ。

グリース潤滑法

グリース潤滑で、軸受を使用する場合、まず軸受の内部にグリースをいっぱいに詰める。この時、保持器などの滑り運動部分にも、いき渡るように、グリースを押し込むようにして、初期の焼付きを防止する。次にハウジングに対して、ハウジング内容積から軸と軸受を差引いた空間容積を求める。軸受の回転速度が、各メーカーカタログ記載の許容回転数の50%以下の使用回転数であれば、この空間容積の1/2~2/3程度の量のグリースを詰め、又50%以上の使用回転数であれば、空間容積の1/3~1/2程度の量のグリースを詰める。なお、深みぞ玉軸受には、あらかじめグリースを軸受内空間の約30%程度封入し、ゴムあるいは金属のシール(DDU、VV)、または、シールド(ZZ)を装着した使いきりの密封玉軸受があり、モーター等に広く使用されている。

グリースの選定

潤滑グリースには色々な種類があるが、一般の用途には転がり軸受用グリース、又はベアリンググリースという分類のグリースを 使うのがよい。特殊な環境で使用する場合は、メーカーの推薦するグリースを使うのが安全である。

油潤滑法

油潤滑には、色々な方法があるが、荷重と回転速度に対する潤滑法の選び方を、下記に示し説明します。


油浴潤滑

滴下潤滑

オイルミスト潤滑

はねかけ潤滑

循環潤滑

ジェット潤滑

 

2:軸受材料

軌道輪及び転動体の材料

軌道輪及び転動体には、通常、高炭素クロム鋼が用いられる。JIS鋼種のうちSUJ2が使用され、大形軸受ではSUJ3。SUJ2の化学成分は、諸外国で軸受用材料として規格化されている鋼、AISI52100(アメリカ)、DIN100Cr6(ドイツ)、 BS535A99(イギリス)などと同等である。対衝撃性をさらに必要とする場合には、軸受材料として浸炭鋼が使用される。その他、耐熱性の優れた高速度鋼、耐食性の良いステンレス鋼なども使用される。

保持器材料
打抜き(プレス)保持器材料には、低炭素鋼が用いられ、用途により黄銅板、ステンレス鋼鈑も使用される。もみ抜き保持器の材料には、高力黄銅、炭素鋼などが用いられる。その他、合成樹脂も使用される。

3:軸およびハウジングの設計

軸やハウジングの精度不良がある場合、軸受はその影響を受け、必要な性能を発揮することが出来ない。例えば取付け部の肩の精度不良(肩の振れ・直角度)があれば、軸受の内輪・外輪の傾きを生じ、端部集中荷重(エッジロード)が加わり、軸受の疲れ寿命を低下させる。さらに保持器の破損、焼付きなどの損傷を生ずる原因となることがある。また、ハウジングは、外部荷重による変形が少なく、軸受を十分支持するような剛性があることが必要です。

軸・ハウジングの精度と粗さ

軸受の取付け関係寸法

参考文献

  • 岡本氏、角田氏 :”転がり軸受” その特性と実用設計
  • 綿林氏 :”転がり軸受の選び方・使い方” 日本規格協会
  • NSK”転がり軸受総合カタログ” CAT.No.1102
  • NSK”NEW BEARING DOCTOR” CAT.No.7005

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